この連載に関し、人文研の宮尾進元所長から「松原については、元コチア職員の志村啓夫(ひろお)さんが相当詳しいものを書いている」との指摘を受け、『志村啓夫文書2012』(岸本晟(あきら)編集)を調べてみた。すると総合農業雑誌『アグロナッセンテ』(92年3月、60号、30~39頁)に掲載された「第二次世界大戦後の日本移民導入の口を開 ...
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大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(14)=回収不能な移民への貸付け=ウナ脱耕で莫大な賠償金請求
ウナ植民地は、実はいわくつきの場所だと『曠野の星』は書いている。いわく《ウーナは今から三十五年前(編註=1929年)ドイツ移民が入って、河畔の近くに家を建て、原始林を開拓してカカオ、ゴムなどを植付けたが、雨時季になるやマレッタ(マラリア)が発生してバタバタと倒れ、遂に全滅の悲運を甞めた。この点、平野植民地やチエテ移住地に似てい ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(13)=約束守られないドウラードス=渡伯一月でスト、前代未聞のウナ
戦後移民の第一便は1953年2月、アマゾン移民17家族がリオに到着、同7月7日に松原移民枠でドウラードス植民地に入る22家族112人が入った。3次に分かれ、総計は和歌山県人54家族、岡山県人10家族の64家族だった(人文研年表116頁)。 リオ・フェーロよりコロニアで知名度が高いのは、「松原植民地」と通称されるドウラードス連邦 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(12)=シングー公園との隠れた関係=すぐ隣には有名なカッペン
ヴァルガスは独裁政権時代の1943年、広大な〃未開〃地域だった中西部に道を開いて開拓入植する「西への行進」(Marcha para o Oeste)運動を始めた。 その過程で大活躍したヴィラス・ボアス兄弟が、〃未開〃と言われた地区には多数の先住部族が住んでいると気付き、彼らの保護区を作るべきだとの構想を提唱するようになった。 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(11)=天皇陛下に拝謁、名士と会す=松原枠認可発表前に会社設立
松原は移住者募集や準備のため、1952年11月に一時帰国した。《松原氏夫妻は母国を訪問、畏れ多くも、天皇陛下に拝謁仰せ付けられ、朝野の要人、名士と会して、ブラジル移民計画を完遂した。翌年七月八日、ドラード移民二十二家族(百十二名)がサントス港に着き「新移民来る」の朗報は、邦人コロニアに、清新の気を漲らせたのである》(『在伯日本 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(10)=反感持つサンパウロ州の有力者ら=カテテ宮にも頻繁に出入り
松原耕地にはサンパウロ州知事が待っており、実際に会談しているのに、1952年10月7日付エスタード紙は4面で《政治的目的なし》と断定した。《ルカス・ガルセス氏はその場に居たが、だからと言って政治的意味はなかった。共和国大統領が来たことへの敬意で知事は言い訳のように立ち会っただけで、この奇妙な訪問を正当化するものではない》(同記 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(9)=ヴァルガスが耕地を訪問=「政治目的なし」と訝るエ紙
52年10月8日付パ紙は「大統領、松原耕地訪問」の見出しで、《ヴァルガス大統領は五日午前、特別飛行機でマリリア駅アヴァエンカ区の松原安太郎氏の耕地内に設けられた飛行場に到着、これを待ち合わせていたガルセース知事と二時間にわたって会談した。(中略)会談内容は判明しないがリオ政界では異常な関心が寄せられている模様である。(中略)ヴ ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(8)=最後までサンパウロ州に拘った松原=52年8月に遠隔州に許可
1951年10月5日パ紙は《「時の人」松原安太郎氏に「移民」を聞く》《有望なのは麻州‥》との3段見出しで報じた。《日本移民大量誘入が話題になるにつれて、マリリア在住の松原安太郎氏の名がクローズアップされて来た。特に先般ヴァルガス大統領から派遣された調査団に加わって以来ジャーナリズムの好対象になった感がある》で始まる。 将来の松 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(7)=「今度は君の頼み聞きたい」=日本人にもう一度機会を!
終戦直後、ヴァルガスが軍部に追い落とされた流れを受け、反ヴァルガス派はここぞとばかりに勢力を結集して保守派のUDN(民主連合)を組織し、ヴァルガス派の革新勢力「PSD(社会民主党)とPTB(ブラジル労働党)」の二派が覇を競う時代となった。 ヴァルガスは雌伏5年、1950年末の選挙では、結果的に《総票数約七百九十万票のうち、その ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(6)=軍に迫られヴァルガス退陣=不遇な時代を支えた友人
大戦中、ブラジル遠征軍(FEB)はは連合国側について、イタリア戦線で独裁政権の枢軸国と戦って多くの血を流した。1945年5月7日、ナチス・ドイツの降伏でようやく勝利した。しかし自国に帰ってみたら、そこにも独裁政権が待っていた。その矛盾が、軍をしてヴァルガス退陣を決意させた。 《世界には民主政治の風潮がみなぎっていた。軍の首脳部 ...
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