しかし、匙を投げる 安瀬は、その頃、自身のカフェザールを四カ所経営していた。樹数は計85万本だったというから、この業界でも大手だったわけだ。そのカフェザールの経営力は世間から高く評価され、ブーグレの再生に関しても期待されていた。 ところが牛窪著によると、この安瀬も霜に破れ去ったという。ブーグレは1959、1963、1967、19 ...
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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(18)
そのうち、「親戚の安瀬盛次に、店を継がせては……」という声が上がった。 安瀬は以前、数カ月、この店を手伝ったことがあり、債権者の一人が覚えていたのである。「鈍重、牛の如し」と評されたが、鋭い閃きを見せることもあった。真面目で働き者でもあった。推薦者は、そこを見込んだのである。 この店主が夜逃げをしたアルマゼンを継ぐという話、凡 ...
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「(冬のある日)底冷えのする寒さとなった。原始林に沈む夕陽が真っ赤だった。空は澄み切っていた。霜の前触れだった。山も畏怖する様に鳴りをひそめた。 霜! 人々は恐怖に脅えた。朝、全山が白銀に包まれていた。真っ赤な朝日が原始林から昇り、中天にかかり、落ちて行く頃には、昨日まで青々としていたカフェーの葉は、褐色に萎え、カラカラに枯れ ...
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農業─商業―加工業の流れを形成 長期的に見た場合、開発前線の日系社会の産業は、農業が本流であった。が、そこから枝分かれして商業という支流が形成された。その形成者がアルマゼン、特に仲買に力を入れた人々である。彼らの中で力をつけた者は、さらに農産物の加工業にまで進出した。 この動きを把握すると、経済面から見た──産業組合以外の──歴 ...
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1926年、北パラナ日本人会が設立された。米蔵は副会長に選ばれ、翌年、北パラナ連合日本人会と改称した時、会長になった。30歳を少し越したばかりであった。 「北パラナに上野米蔵あり」と、サンパウロ州の邦人社会にまで知れ渡った。会長職は、以後、なんと32年間も務めることになる。 しかし、アルマゼンの仕事は、何故、そんなに調子良く行 ...
続きを読む »『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(14)=アルマゼンとは?
さて、そのアルマゼンであるが──。 今日、アルマゼンといっても、ピンと来ない人が多いだろうが、開発前線の歴史を咀嚼するためには、看過できない存在である。当時の資料類の中では「雑貨商」と訳されている。筆者は、初めてこの文字を見た時、昔、日本の町や村にあった細々(こまごま)とした雑貨を商う小さな店を思い出した。 お婆さんが店番をし ...
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1916年、福太郎の招きで、その親戚の上野米蔵一家がやってきた。同じ年、サンパウロ市の東洋移民会社の社員がブーグレを視察、翌年、若狭丸移民15家族を配耕した。以後も続いた。1932年の調査資料では、ブーグレの日本人労務者は、58家族となっている。 ちなみに、右の上野福太郎は大きく儲けて日本へ帰国し、移民の目的を果たした。当時の ...
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バルボーザは息子たちと土地販売会社を設立、実際に売り始めた。やがて日本人が、その一部を買うことになる。 この鉄道会社の譲渡交渉で、両者の仲介をしたのが、メスキッタであった。交渉成立で彼には手数料が入ったが、少年時代からの夢であった建設工事を請け負うことは、残念ながら出来なかった。新経営陣がロンドンの業者を選んだからである。彼は ...
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英国資本、参入 1923年末、時の大統領に招かれた英国の経済使節団が、この国を訪れた。メンバーの中にロード・ロバト(LORD LOVAT)卿がいた。男爵であり、51歳だった。卿は英国の一流会社スーダン・プランテーションズのオーナーの一人であった。 同社はアフリカのスーダンで棉を栽培、英国へ輸入、紡績業界に供給していた。その紡績業 ...
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ブーグレのカフェーの育ちぶり、繁茂ぶりは素晴らしかった。ここの土は特に肥沃で、40年間、無肥料で持った──という伝説すらある。バルボーザは、このファゼンダに惜しみなく大金を注ぎ込んだ。セーデ(本部)には大邸宅、巨大な乾燥場や倉庫を建てた。原始林10アルケーレスを柵で囲い、種々の動物を放った。庭には栽培可能なあらゆる果樹を植えた ...
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