難航に次ぐ難航 前項で記したパニックのさ中、ブラ拓事務所が直営農場で栽培・飼育したモノの中には、蚕もあった。 養蚕は、入植者の中の農業者の多くが、日本で経験していた。それと、サンパウロ州政府も蚕糸・絹業に力を入れていた。その援助でカンピーナスにイタリア移民のナショナル絹糸工業㈱が設立され、蚕種製造から桑の栽培、養蚕、生糸・絹 ...
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(10)
世界一! ここで、一寸と話は飛ぶが――。 この国の日系コロニアで政治、経済、文化、スポーツその他いかなる分野でもよいから〝世界一〟の折り紙をつけられる対象があるだろうか……といった類のことは、筆者は考えてみたこともない。 ある筈はないからだ。 ところが、それがあったのである。 ブラタク製糸㈱が、生糸メーカーとしては世界 ...
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連合会幹部、更迭 前項までに記した様な乱れに併行、移住地経営上の一大齟齬が生じていた。日本からの入植者が、毎年200家族の計画に対し、実績は1929年は既述の様に64家族、1930年は23家族、31年は7家族…という情けないほどの数字だったのである。 対策として、ブラ拓は各地に居る既存の移民を入植させるという手を打っていた。 ...
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乱れに乱れる 移住地の乱れは、1930年に入ると、一段と激しくなった。 2月、畑中は入植者二人を移住地から追放した。この二人はブラ拓事務所へ盾突き続けていた。 詳細については資料を欠くが、相当荒っぽい言動があったのであろう。畑中は「秩序安寧を害する」と右の強硬処置をとった。 乱れは、入植者とブラ拓事務所の関係だけではなか ...
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反故にされた〝県移住地〟 入植早々からのバストス移住地の乱れには、もう一つ大きな種があった。 入植者が日本出発前に移住組合で聞いた話では「バストス移住地を、県単位で幾つかの移住地に分割する。鹿児島移住地とか和歌山移住地が出来、各県人がそこに入り、独立した経営をする」ということであった。 これは入植者にとっては、小さいけれど ...
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不平・不満が百出… 1929年、バストス移住地は6月以降、数回に分けて、日本から入植者を迎え入れた。ところが、200家族の計画に対し、年末までに到着したのは64家族に過ぎなかった。しかも彼らは、日本から着いた時、ブラ拓事務所に不快な印象を抱き、以後も刺々しく接することになった。 『バストス二十五年史』の〈草分けの想出を語る座談 ...
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不吉な兆し 連合会の移住地用の土地選定は、無理を犯して始めたが、やはり端(はな)から問題を孕んでいた。地質である。バストス移住地の土は、粒子が大きくて保水力が弱く、作物に必要な栄養分が流れてしまう砂地が多かったのである。 普通の農作物には不向きであった。最初に予算をケチった結果である。それと、1万2千アルケールもの広さの原始 ...
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国策移住地、第一号 日本の対ブラジル移植民事業は――本稿の第三部で記したことだが――最初から試行錯誤を続けた。水野龍のカフェー園移民、青柳郁太郎の植民地移民…と。 その教訓から次に案出されたのが「地権が確実で営農に適した広大な土地を買い、移住地を造る。そこに日本から直接、移民を自営農として送り込む」という方法であった。 移 ...
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悲しき習性 地域の日系住民が――自分たちが狙われていることは判っているのに――団結して強盗に対する自衛策をとらない…という摩訶不思議な現象は、バストスに限らず何処でも起きた…あるいは起きていることである。例外を耳にしたことはあるが、数は少ない。 何故そうなのか? 2012年バストス滞在中、農村協会会長の古賀ウエリントンさんに ...
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バストスで起きた強盗事件は、例えば次の様な具合だった。 ━━日本(出稼ぎ)から帰ってくると、翌日には強盗が、その家にやってくる。 強盗に殴られたショックで、入れ歯を呑み込んでしまい、死んだ人もいた。 強盗に暴行され、大怪我をし入院した老人もいた。筆者が、バストス産組で既述の取材中、高木さんがその話をし「この方がそうだ」と傍 ...
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