破竹の勢い 1946年1月、バンデイランテ産組の理事会は、バストスに出張所を開くことを決定、所長に水間久を指名した。水間は固辞したが、専務の原田は辞令を送付した。すると水間は上聖、理事会で、存亡の危機にあるバストスの経済情勢をつぶさに説明、こう申し入れた。 「この辞令では活動できかねる。バストス出張所に関する一切の権限を与え ...
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(23)
ブラジル一! 話をもう一度、終戦直後に戻す。 何度も書いたことだが、当時この国の蚕糸業は崩壊、バストスもバストスそのものが半ば壊滅してしまっていた。大半の住民が生きる方途を求めて、次々と他へ移動して行く中、残留組は死中に活を求めて新産業を模索していた。そして一時、西瓜・ポン柑に光りを見い出した。が、結局、西瓜は、その主たる出 ...
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新たな危機! 世界一となったブラタク製糸にも、実は新たな危機が近づいていた。生糸の販売量の恐ろしいほどの減少である。1991年の1、000㌧台から以後漸減し、21年後の2012年には半分の500トンを割った。 その間、従業員も2、850人から916人と三分の一以下になっていた。 もっとも、これは同社だけの現象ではなかった。 ...
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遂に一社だけに… 1983年、この国の生糸の生産はブラタク製糸が52%を占め、日系進出組が47%、非日系1%となっていた。ブラタクは、進出組6社と競合、過半のシェアを確保していたのである。 進出組は、ブラタク以外の生糸メーカーを廃業に追いやっていたが、実は、その経営は順調ではなかった。まず市田が華僑との合弁を試みて失敗した。 ...
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進出企業と競合、生き残る 順風満帆の、そのさ中、またもブラタク製糸の存亡に関わる大異変が発生した。1972~76年、日本の生糸メーカー6社が進出してきたのだ。カネボー、グンサン、昭栄、コーベス、東邦レーヨン、市田である。 6社が進出したのは、日本の養蚕家の減少が主因であった。従って、いずれも生糸の生産、日本その他への輸出、ブ ...
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技術、技術、技術… 1952年、蚕糸業界は往年の活況を取り戻していた。 同年、ブラタク製糸の役員が改選され、社長=加藤好之、役員=井久保治、天野賢治、谷口章となった。従業員は344人、生糸は年産42・7㌧で、サンパウロ州の生糸生産の60㌫を占めていた。残りが橋本製糸や非日系の10社近くの合計分であった。 しかしブラタクは、 ...
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蚕糸の鬼 話を終戦直後に戻す。 バストスでは蚕糸業者が次々、廃業していた。そういう時、その蚕糸業に執着していた男がいた。 橋本光義という山梨県人である。資料類は彼を「短躯ながらも剽悍、直情径行、志操強靭、蚕糸の鬼」と形容している。1900(明33)年の生まれで「蚕の中で生まれ、蚕と共に育った」という。生家が養蚕を営んでいた ...
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事件相次ぐ 溝部事件の翌4月の30日、バストスの敗戦派7人の店や住宅に小さな箱が届けられた。見かけぬ非日系の子供が持ってきたという。 届け先は池田正雄の店、草原義松、大場八郎、山中権吉、阿部一郎、本田正雄、林ジョンの家だった。池田の店、大場、山中の家でそれを開けた。小さな爆発が起こり、商品が四散したり、人が手や腕に怪我をした ...
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溝部事件――今なお真相は不明――。 そして3月7日夜、殺気は現実のモノとなった。溝部幾太が自宅の裏庭で射殺されたのである。 それから69年後の2015年、筆者は溝部の娘さん二人に会った。娘さん…といってもお婆さんになってサンパウロ市内に住んでいたが、そのお姉さんの方の話によると――。 溝部が撃たれた時、彼女は家の中に居て ...
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町に殺気が… 同時期、各地の邦人社会に流言飛語がとびかっていた。その中に「日本海軍の艦隊が近くサントスに入港する。邦人を祖国に迎える使節を乗せている」という報があった。無論、デマであったが、それを信じ、艦隊を出迎えようとして、無数の日本人が地方から出聖した。サンパウロを足場に情報を集め、サントスに下るつもりであった。その中には ...
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