騒乱 終戦と同時にバストスが半ば壊滅してしまった…その時期、この国の邦人社会は、別の理由で騒乱状態に陥っていた。 その騒乱は、実は戦時中から始まっていた。サンパウロ州のノロエステ線、パリスタ延長線その他で、農家の養蚕舎が焼討ちされたり、薄荷畑が破壊されたりしたのである。絹や薄荷油は、祖国日本が戦っている米国に輸出され軍需物資 ...
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(13)
ここで少し補筆しておくが、1941年末の日本の開戦後、連合国側についたブラジル政府は翌年1月、日本との国交を断絶した。同時に在伯日本人を敵性国人と指定した。さらに、敵性国資産の凍結令を発した。これはブラ拓にも適用された。サンパウロの本部には、州政府からブラジル人のインテルベントール=監察官=が派遣された。 ブラタク製糸のバス ...
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ブラタク製糸の実務を担うことになった前記二人の内、天野賢治は1905(明38)年、横浜市に生まれた。地元の商業学校を出た後、近衛聯隊勤務(少尉)を経、横浜の糸商に就職、ニューヨーク支店に派遣された。(糸商=生糸を主として絹糸、絹織物も扱う商社) ここで1929年から10年間、勤務した。その末期は日米関係が悪化、開戦も予想され ...
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難航に次ぐ難航 前項で記したパニックのさ中、ブラ拓事務所が直営農場で栽培・飼育したモノの中には、蚕もあった。 養蚕は、入植者の中の農業者の多くが、日本で経験していた。それと、サンパウロ州政府も蚕糸・絹業に力を入れていた。その援助でカンピーナスにイタリア移民のナショナル絹糸工業㈱が設立され、蚕種製造から桑の栽培、養蚕、生糸・絹 ...
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世界一! ここで、一寸と話は飛ぶが――。 この国の日系コロニアで政治、経済、文化、スポーツその他いかなる分野でもよいから〝世界一〟の折り紙をつけられる対象があるだろうか……といった類のことは、筆者は考えてみたこともない。 ある筈はないからだ。 ところが、それがあったのである。 ブラタク製糸㈱が、生糸メーカーとしては世界 ...
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連合会幹部、更迭 前項までに記した様な乱れに併行、移住地経営上の一大齟齬が生じていた。日本からの入植者が、毎年200家族の計画に対し、実績は1929年は既述の様に64家族、1930年は23家族、31年は7家族…という情けないほどの数字だったのである。 対策として、ブラ拓は各地に居る既存の移民を入植させるという手を打っていた。 ...
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乱れに乱れる 移住地の乱れは、1930年に入ると、一段と激しくなった。 2月、畑中は入植者二人を移住地から追放した。この二人はブラ拓事務所へ盾突き続けていた。 詳細については資料を欠くが、相当荒っぽい言動があったのであろう。畑中は「秩序安寧を害する」と右の強硬処置をとった。 乱れは、入植者とブラ拓事務所の関係だけではなか ...
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反故にされた〝県移住地〟 入植早々からのバストス移住地の乱れには、もう一つ大きな種があった。 入植者が日本出発前に移住組合で聞いた話では「バストス移住地を、県単位で幾つかの移住地に分割する。鹿児島移住地とか和歌山移住地が出来、各県人がそこに入り、独立した経営をする」ということであった。 これは入植者にとっては、小さいけれど ...
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不平・不満が百出… 1929年、バストス移住地は6月以降、数回に分けて、日本から入植者を迎え入れた。ところが、200家族の計画に対し、年末までに到着したのは64家族に過ぎなかった。しかも彼らは、日本から着いた時、ブラ拓事務所に不快な印象を抱き、以後も刺々しく接することになった。 『バストス二十五年史』の〈草分けの想出を語る座談 ...
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不吉な兆し 連合会の移住地用の土地選定は、無理を犯して始めたが、やはり端(はな)から問題を孕んでいた。地質である。バストス移住地の土は、粒子が大きくて保水力が弱く、作物に必要な栄養分が流れてしまう砂地が多かったのである。 普通の農作物には不向きであった。最初に予算をケチった結果である。それと、1万2千アルケールもの広さの原始 ...
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