ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 入国米国人の指紋登録開始=入管規制強化に報復=空港でいら立つ観光客

入国米国人の指紋登録開始=入管規制強化に報復=空港でいら立つ観光客

1月7日(水)

 【各伯字紙社会面一日~六日】ブラジル連邦警察(以後、連警)は一日から、入国する米国人を対象に、顔写真と指紋の登録を実施している。米国政府のテロリスト対策の一つである新入国管理制度で、ブラジルを含む二十五カ国に同様の措置が設けられたことに対する報復として、ブラジル・マット・グロッソ州のジュリエール・S・シウヴァ連邦判事が二十九日に命じた。これに対し米国側は、「米国人のみを標的とする差別的行為」として遺憾の意を表している。リオデジャネイロ市は「我々の友好的な国民性が疑われ、観光ビジネスの妨げとなる」とし、連邦判事の命令を無効にするよう上級審に申し立てている。

 米国人観光客の登録は一日、サンパウロ州グアルーリョス国際空港で開始された。連警によって、入国した米国人約二百三十人の顔写真と指紋が登録された。連警によると、多くの米国人観光客が登録措置に苛立ちを見せたという。初めは十指すべての指紋を押捺(おうなつ)していたが、手続き時間を短縮するため現在では親指だけの指紋を取っている。
 テロリスト攻撃を恐れる米国政府は五日から、二十五カ国の観光客に対して顔写真撮影と指紋押捺を義務付ける制度の本格運用を開始。これらの国々の外国人は、ビザ(査証)を取得しないと入国を許されず、ブラジルも例外ではない。ブラジル外務省は十二月、「厳重な入国管理の対象国からブラジルを外してほしい」と米国側に求めていた。
 米国の措置に憤ったジョゼ・P・タケス連邦検事が、「米国のブラジル人観光客に対する非道に対して報復すべきだ」と訴訟を起こし、シウヴァ連邦判事が訴えを聞き入れた。
 シウヴァ判事は二十九日の判決の際、「米国は入国管理を厳しくする権利がある。しかしながら、『主権の相互尊重の原則』に従って、ブラジル側も同様の措置をとる権利を持つことになる」と主張した。
 ブラジル外務省は、対米関係を配慮し、命令の無効を上訴する可能性を示唆している。
 リオデジャネイロ州アントニオ・カルロス・ジョビン国際空港では三日から米国人の登録が始まった。
 リオに観光で訪れたクリッププロデューサーのRex Polkinghorneさんは、顔写真・指紋登録について、「まるで犯罪者扱いだ。でも、ほかの観光客も同じ対応を受けたから、別に気にしていない」と、不愉快な気分を露わにしながらも理解を示した。
 エコノミストのRchard Essさん(三三)は、登録プロセスにうんざりしたと言明。黒いインクで汚れた十本の指を見せながら、「長い飛行時間の後にこんなことをやりたくないよ。ブラジル側の方針は理解できるが、テロはアメリカで起こるもの。ばかげた措置だと思うけど」と笑った。
 同じく米国人観光客のBerk Ozlerさんは、ブラジル人観光客の立場になって、「これによって米国人は、米国に入国する外国人の気持ちが分かるだろう」と弁護した。「でも、良い方法とは言えない。ブラジルに来るアメリカ人の数は減少すると思う」。
 Laurin Hallさん(五八)は、番号札を持たされ顔写真を撮影したり、指にインクをつけて指紋を取ったりするブラジルのシステムに驚愕。「なんて古臭い登録方法かしら? 一九四〇年代にタイムスリップしたみたいだわ」。
 アメリカン航空のフライトアテンダント、リリアン・オリヴェイラさんは、旅客機内でブラジル政府が米国人を登録することを伝えていると話した。
 フランスの『ルモンド』は三日、米国の入国管理制度に反発した数少ない国の一つとしてブラジルの措置を報道した。同国『フィガロ』は、ルーラ政権が米国に報復しているのではなく、あくまでも裁判所が決定したことであることを強調している。

米国の手続きは簡単

 五日、米国では、外国人入国者に対する新しい管理制度が開始した。ニューヨークを訪れたブラジル人観光客のパウロ・シウヴァさん(四二、教員)は、「入国取締官は礼儀正しく、手続きに十分もかからなかった。ブラジルがテロ対象国とは心外だが」と言明。米国在住三年になるルシアーナ・M・ロッシャさん(三一)も、「入国手続きはいつもより少々時間がかかったけれど、別に問題はなかった。ブラジルに帰国した時(十二月)は、トランクを二十回もチェックされて大変だったけど」と話す。
 一方同日ブラジル・リオ国際空港に到着した米国人約三百人は、登録手続きの長蛇の列に苦しんだ。在ブラジル米大使館は同日、「百五十カ国のうち、アメリカ入国にビザを必要とする諸国の観光客のみに行なっている措置であり、ブラジル人だけが差別を受けているわけではない。それに対してブラジルは、米国人だけを差別している。リオ国際空港の入国管理事務所では五日、最高九時間も待たされた米国人観光客もいた(ブラジル側は七時間と発表)。我々はブラジル入国時に貴国の主権を尊重しているが、このような管理制度が実施されたことは遺憾である」と抗議した。

――関連――

■入国米国人の指紋登録開始=入管規制強化に報復=空港でいら立つ観光客(1月7日)
■リオ入管手続き改善=米国人の登録、平均20分(1月8日)
■ブラジルの報復、厳しい=米国務長官が懸念表明(1月9日)