3月17日(木)
資金調達プランを説明した中谷アンセウモ委員に続き、山下譲二文協元専務理事はスライドを使って総合センタ―案を説明した。
日系社会の問題点として「アイデンティティの不確定」「ブラジル社会に対する日本移民および日本人の貢献度を顕彰する金字塔が不在」「日系人の役割が日伯両国からもっと高く評価されるべき」などを挙げ、「まさにこの傾向を転換させるためにこのプロジェクトは到来した」と語った。
同総合センターを建てる予定のヴィラ・レオポルジーナの地権は、ブラジル宝石協会(IBGM)の会員有志八十人が出資して作ったブラジル・コンベンションイス社にある。同社と事業開発企業(インポルポラドーラ)サンドリア社の事業案はすでに市役所で承認済みであり、それを修正するだけで総合センターにできるため、大幅な時間短縮が可能とのメリットを論じた。
二時間半かけて、祭典協会側からの説明が終わった時、客席から野村丈吾元下議がステージにあがり、「予定にはなかったが、少しだけ話をさせてほしい」とマイクを握った。
「ここで説明されている百周年には大賛成です。ただ問題は『遠くて行くのは難しい』『なんとかリベルダーデにしてくれないか』という電話が、ジャンジャン私のもとに入っている。そして、百周年まであと三年しかなく、二〇〇八年六月十八日には完成し、一世のみなさんと共に百周年を立派にやりとげないと恥になる」と現執行部を支持しつつも、一般からの声との板ばさみになっている苦しい胸中を語った。
文協の脇にある陸軍施設に関して、先日、小原彰陸軍少将とブラジリアで話した折、大いに可能性があるという話を聞いたという。
「ここの横の土地を使って、三~五世までが誇れるシンボル、総合センターにすることに、みなさんの賛成をお願いしたい。今ごろと言われるかもしれないが、早く解決しないと手遅れになる。早くコンセンサスを固めないと、このままでは日本側も認められないと思います」と演説すると大きな拍手が湧いた。
百周年まで上原体制を支持するが、ヴィラ・レオポルジーナでは総意がまとまらないから、文協脇の土地を買収し、こちらを大竹氏設計の総合センターにするという折衷案だ。
これに対し、中谷委員は「これから新しいプロジェクトを始めて本当に間に合うのか、検討する必要がある。またリベルダーデの土地で本当に実現できるのか、専門家に突き詰めてもらった方が良い。ただの思い付きで判断しないでほしい。現実的な意見をお願いしたい」と従来の姿勢を貫いた。
質疑応答のトップは田辺豊太郎氏で、「これが百周年であるからには、全伯のみなさんのコンセンサスをとることが必要」と強調。さらに日本語センターの諸川有朋理事は「二~五世への協力は惜しまないが、総合センターのような投資は別問題。投資するなら投資家にさせればいい。協力するなら、自分たちの建物になるものにしてほしい」と厳しい口調で語った。
「文化継承をしているのは、建物や情報センターでなく文化団体。その文化団体からのコンセンサスがないのに、どうして文化ができるのか。みんなが本当に賛同できるものを作らなくてはいけない。そのためには自分から説明するだけでなく、もっとみんなから意見を聞く必要がある」。
また、別の男性は「実に立派な計画だが、地権の問題が分らない。人の土地に建物を立ててもしょうがない」との発言があった。
それに答え、渡部和夫補佐は「みなさんアパートを買った経験があるでしょう。あれと同じです。総合センターの部分はコミュニティのものになるのです。弁護士として、法律上問題ないことを言っておきます」と地権に関してだけ説明した。 (つづく)