3月18日(金)
食の安全性を厳密にいうと、何も食べられないではないか、と言った人がおられます。とかく、農家で食す野菜類、果物類は、住まいの周りに菜園をつくり、しっかり堆肥を施し、無農薬野菜をつくって食べておられます。虫で穴だらけの白菜でも二股のダイコンでも、おいしく、甘みのあるものでした。
マイリポラン近郊で、堆肥づくりに興味を持つあるブラジル人の野菜農家へ同行しました。サンパウロ市役所が処理している、生ゴミ堆肥を大量に野菜畑に投入しているではありませんか。いやー、びっくりです。
市役所にしてみれば、堆肥は堆肥だとばかりに、家庭から出るゴミを処理場で大体分別した最後の生ゴミを適当に醗酵させて、堆肥にしています。確かに醗酵し、有機質の分解もします。サンパウロ市内からでるこうした生ゴミの量は莫大な量ですが、その一部が堆肥化されています。毎日処理される堆肥の量もたいへんな量です。
しかしながら、家庭でゴミ分別をしていないブラジルでは、とにかくゴチャ混ぜのゴミですから、例え分別した生ゴミ堆肥といえども、何が含まれているか判ったものではありません。日系人の野菜農家で、この生ゴミ堆肥を無料で提供を受けて大変な目にあったところもあります。その農家を訪問したときに、生ゴミ特有の臭い匂いを感じたのを覚えています。金属やガラスなどの混入が妨げになっているといいます。そして匂いもあります。
生ゴミ・コンポストは日本でも家庭で完全分別されて、堆肥化されています。生ゴミ堆肥の一番の欠点は、分析上どうしてもわずかながら重金属物質が残っていることです。
最近では、ブラジルでも各地の市役所が処理場を建設して、収集したゴミを分別して、可燃ゴミ、ガラスビン、空き缶類、段ボール紙、ポットボトルなど再製材を大体分別した後にでる、食料残渣などを堆肥化する動きがあります。都市ゴミの堆肥化には、醗酵の熟度が問題で、一次醗酵(強制通気)のあと、十分な後塾期間をおかずに、中塾堆肥として処分してしまうことです。
またゴミという性質上、有害成分を完全に取り除くことができません。日本の特殊醗酵装置や特殊醗酵酵素をつかっても、重金属の鉛、アルミニウム、カドミウム、水銀、クロムが規定量以下ですが含まれていることです。この重金属含有量を規定化しない限り、食材となる植物栽培には堆肥として使うべきではないのです。公園の樹木、花壇、街路樹などに使うべきものです。花卉栽培農家でもゴミ堆肥を使って、失敗したところもあります。まず、匂いのある都市ゴミ堆肥は、どこにも使えません。
食の安全性から、野菜や果物はできるだけ有機質堆肥を施し、化学肥料を減らし、農薬の量を減らすように生産者農家のみなさんにお伝えしています。
これに対して、花卉栽培農家は、直接、人の口に入るのではないというわけで、殺菌剤、殺虫剤と大量の農薬を平気で使っています。堆肥材が手に入りにくい理由で、わずかながらの有機質材を鋤き込み、化学肥料を使いながら、微量要素が不足すると、これも化学肥料の微量肥料を加えて、しのぎを削っているようです。人の食になるものではありませんが、多くの人や花を観賞する人たちがその花の匂いを嗅いだり、触ったりするではありませんか。花の市ではものすごい農薬の匂いを感じます。消費者のみなさんも、食の安全性ばかりでなく、身の回りに飾る花にも注意が必要だと思います。 (つづく)
■食と健康そして環境=連載(1)=考えよう健全な水と食材の確保=水源地汚染じわりと=硝酸態チッソ、生活に影響