2005年7月22日(金)
巨大な冷凍庫のように冷たい体育館。子供たちは誰に何を言われるでもなくほうきを持ち出してきて掃き掃除を始めた。終わると今度は雑巾がけだ。普段学校で掃除をする習慣がないせいか不器用な体勢で雑巾を使う。ふざけあいながら濡れた雑巾で床をなでる子供たち。すっかり飽きてしまい追いかけっこをして遊ぶ男の子もいる。少しずつ館内が温まってきた。
掃除が終わってもすぐに練習は始まらない。お祈りの時間だ。「おしえおや」に手を合わせ三十分ほどの儀式が行なわれる。
立派な音響設備があり、マイクを通して広い体育館に指示が出される。「キッズ、入場準備してください」観客席から全体を見渡して指揮するのは安永マルセルさん(23、三世)。「ヨサコイについては何も詳しくはないけれど、リーダーとして」とチームをまとめる。
昨年までヨサコイを振り付け・指導していたバトントワリングの元ブラジル代表監督簾田武志さんが今年六月に帰国したため、安永さんやアナ・パウラ・ブラガ・アイリスさんら教団リーダーが中心になって総勢約百七十人の大きなチームを率いる。「簾田さんが帰国する前に振り付けは終わらせたのだけど、バトンの技術はあまり指導できないからみんなで声を掛け合うしかない」とブラガさんは練習の難しさを話す。
PL教団のヨサコイ参加は今年二回目。第一回のYOSAKOIソーランを見て「集団行動を学ぶのによい」と考えた簾田さんが呼びかけ、昨年キッズ部門に出場した。今年はアドゥルトチームも結成。人数は膨れ上がり、練習はバス三台を出してアルジャーの教団施設で行なわれる。六月は隔週、七月は毎週末合宿だ。
パンデイロを持って踊るのは、ジオヴァンナちゃん(8)とガブリエラちゃん(9)。「これはブラジルの楽器なのよ」と得意げに教えてくれた。
「自分たちのヨサコイを作るために、ブラジルを表すパンデイロ、タンボーレスを取り入れました」とブラガさんが説明する。彼女は非日系人のブラジル人。PLは日系人が二十パーセントと少ないチームである。いかにヨサコイを自分達のものにするか考えた結果、鳴子のほかにもパンデイロやタンボーレスなどブラジルの楽器を取り入れることになったという。またバトンも目玉になるPLヨサコイのアイテムだ。まさにブラジルらしいたくさんの要素がつまった作品になっている。
バトングループの女の子達は輪になって、投げたバトンを隣の人が受け取るという難しいパートの練習を繰り返していた。「取れた!」「あとちょっと!」。ひとりひとりの動きは易しくても数人で合わせると難しくなる。
子供たちはヨサコイを通してたくさんの要素が混在する集団でどうやってうまくやっていくかを学んでいるところだ。つづく (秋山郁美記者)
■響け!ボクたちの鳴子――今年3年目、YOSAKOIソーラン大会――=連載(1)=振り付け変えてもすぐ順応=平成学院=3年連続出場の子も