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特別寄稿=連載(4)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義

2005年10月15日(土)

 そうした戦後の時代になって、日系社会は二、三世々代が各面でブラジル社会に浸透して行くとともに、急激に同化傾向をたどってきた。
 現今のブラジル社会が理想としているのは、それぞれの移民人種がもたらした各国文化を後継世代にも継承し、ブラジル社会全体をまとめて統合して行くという、いわゆるサラダボウル(ブラジル社会という一つのうつわのなかで、アルファッセはアルファッセの、トマテはトマテの持ち味を失なわず、まとまってサラダをつくること)だ。
 なぜニッケイ人は他人種には見られない、ブラジルの学者も驚くほどのドラスチック(激烈)な同化傾向をきわめてきたのか。このことは、日本人またブラジルにある私たち自身のありようを知る上で、考えて見なければならない問題でもあるだろう。
まずは教育機関の創設
 この現状の中で、日系社会を新たに構築するとしたならば、第一に何を為さねばならないか。何よりも先に立派な箱物を造るということが、いかに意味のない無駄なことであるかが理解されるであろう。
 それ以前にしなければならないことは、二、三世以降のニッケイ世代を含めた、ブラジル人一般に対する、移民世代にはじまる日本文化の普及以外にない。
 ニッケイ後継世代の場合、これは日本文化の継承ということになるだろう。とにかく、まず必要なことはブラジルに広く日本文化なるものを普及し、伝えて行くことである。
 ここで私のいう日本文化とは、とかく誤解されるように、生け花だとか、茶道だとか形のあるものだけではない。永い伝統を持つ、日本人のつくり上げてきた広い意味の日本文化の特質、良き資質を、ニッケイ後継世代を含めたブラジル国民の間に普及させて行くことである。
 文協(Sociedade Brasileira de Cultura Japonesa)の創設理念の中に、日系コロニアの代表機関たることを掲げる。のみならず、その名称にも謳われているように、「ブラジル国民に対する積極的日本文化の紹介、日伯文化交流の促進強化」を掲げ、日本文化のブラジル国民に対する、積極的普及を目ざしていたはずなのである。
 従って、これからの新文化協会の再構築は基本理念に立ち帰り、ブラジルにおける日本文化普及の中心センターを目ざすべきなのである。
 現状においては、ニッケイ後継世代を含めて、日本文化に関心を持つものは極めて少ない。
 ここ数年、日本食ブームが起きたり、『Ultimo Samurai』という映画や『宮本武蔵』の翻訳ものの出版がベストセラーになったりで、「ブシドー」に関心を持つものが出て来たり、アニメブームで若者の層も含めて、ブラジル人の間に日本文化に対する関心は高まって来ている。これを契機として、日本文化をもっと詳しく知りたいということで、ニッケイ人児童の間では急激に衰えてきていた日本語学習者に替わって、非ニッケイ人の間に日本語を学ぶ者が増えてきているといわれ、まことによろこばしい現象だ。
 肝要なのは、こうした現象を単なる一過性のものに終わらせず、持続的にこの傾向が続くように、そうしたことを目的とする組織・施設を造り、機能的、積極的に日本文化の普及を計って行くことである。
 それには、何をおいても日本文化普及を基本理念とした、組織的な教育機関の創設である。
   (宮尾進、つづく)

■特別寄稿=連載(3)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義

■特別寄稿=連載(2)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義

■特別寄稿=連載(1)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義