4月26日(火)
ゴイアス料理に舌鼓を打った後、県連ふるさと巡り一行は、二日目の宿である「ゴイアス州最初で唯一の五つ星ホテル」との宣伝文句のカストロ・パーク・ホテルを四月二日午後六時に出発。州都ゴイアニア市中心部から十五キロほど郊外に離れたゴイアス日伯協会(クアイ・マリオ会長)へ向かった。
七ヘクタールの敷地には、会館や日本語モデル校の他、大小のサッカー場、夜間照明設備にあるテニスコート五面、屋根付きのゲートボール場、多目的体育館、青年部室、プール、サウナなど立派な設備があり、従業員も八人いる。
夕闇迫る中、順々に案内されながら、一行はその充実振りに目をみはった。
「これだけの施設を維持するには大変な費用がかかるでしょう」との参加者からの質問に、松井ジャジール前会長(47)は「この施設を維持するのに月一万五千レアルの出費です。会費収入ではその半分しかまかなえない。残りはイベント収入で補っている」と説明した。
一九五六年に日本人会が発足し、約三十年前に現会館が完成した。付近には五百家族の日系人がいると見られているが、会員はうち三百家族。会費は一家族で年二最低給のみだ。「もっと会費を上げてもいいけど、そうするとビジネスになってしまう」。七十歳以上は無料にするという配慮も忘れない。
この会館で毎年四回、大きな日本食祭りを開催する。婦人会総動員で寿司や刺身を提供し、地元ブラジル人が来場者の八割を占めるという。毎回二万レアルを売り上げる。
以前はコロニア内部だけだった盆踊りを、〇三年から外部の人を呼んで大々的にやるように変えた。すでにゴイアニア市の公認行事であり、テレビ地元局でも宣伝を流す。〇三年には三千五百人、サンパウロ市からコロニア歌手のジョー平田さんや和太鼓ヒマワリを呼んだ昨年は四千八百人が来場し、十八万レアルも売り上げた。
十五レアルでヤキソバ付き入場券を売る。「何と言っても、みんなで踊るのが最大のアトラクション。踊る人の七割は非日系ですよ」と解説。松井前会長は、「今年は六千人を目標にしている」と抱負を語る。
このように外部から人を呼んで大々的にしたのは、二世中心の理事会になってからだ。「バトンタッチは終わった。一世も行事に参加し盛り上げてくれている」と松井前会長。
施設を見てまわる一行からは、「施設も運営もなかなか立派なものだ」との感想が口々に漏れた。
敷地内にあるゴイアス日本語モデル校は一九九八年十一月創立だ。大木戸貴子校長(35、二世)は「会話能力を強化するために、今年から演劇を始めました」と強調する。グローボ局で放映されたノヴェーラ「セニョーラ・ド・ディスチーノ」の場面を日本語の脚本にし、演劇として練習する試みだ。
生徒数は百十人で、半分は非日系人だという。成人と子ども半々。JICA派遣の青年とシニアボランティアを含め、教師陣は九人いる。地元教師の大半は二~四世と若いのが特徴だ。
市街中心部から少々離れているため、平日の授業に生徒が集まらず、週末に集中してしまっているのが悩みだという。
会員数はここ数年特に増減はないが、「デカセギは多い」と松井前会長は顔を曇らす。
その一方、「ここの青年部には二百人もいる。彼らはここで日本食祭りや盆踊りの準備を手伝ってくれる。一緒に大きな仕事を成し遂げる経験が、団結を生み、協会への愛着を深めてくれる。その雰囲気をいかに維持するか、それが我々の役員の仕事です」と嬉しそうに語った。
(つづく、深沢正雪記者)
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