3月19日(土)
有機農法とは、化学肥料、除草剤、生育調整剤、飼料添加剤などの化学合成物質をまったく使わないか、最小限にとどめて、堆きゅう肥などの有機物を主体とする生産方式をいいます。化学合成物質が安価に供給され、多量に使用された結果、土壌が悪化し、自然生態系を破壊したり、農畜産物中に残留して人間の健康を損ねたりする恐れがあるという理由から、これらの物質に頼らずに安全な食料を生産しようとする農業です。
いまブラジル国内でも、できるだけ化学肥料を使わず、農薬をいっさい使わない方法に挑戦する農家が増えてきています。背景にはブラジル産のフルーツ輸出が伸びて、その生産方法に規定があるからです。それは果物に残る残留農薬です。散布した殺菌剤・殺虫剤、除草剤といった農薬が自然界で長期間分解されないで残留し、農畜水産物に吸収、蓄積され、人がそれを食べると健康を損なう危険性があるので問題にされているからです。
世界大戦後、農薬が安価で大量に生産されて世界中に広まりました。それまで、病原菌に冒されて収穫が減ったり、害虫の害を受けて全滅したりしても、何とか市場に農産物を出荷してしのいできました。それだけに自然の味もありました。
収穫量をあげるために、作物に農薬が大量に散布されはじめたのです。しかし、散布された農薬のうち、作物に直接浸透するものはごく一部で、大部分は土壌、田水、大気中に残ります。農薬のうちでも有機塩素系農薬は土壌中に分解されにくく、残留期間はDDT四年、BHC三年、デルドリン三年、アルドリン二年といわれています。
この農薬は、キュウリ、ジャガイモなどから検出され、また飼料から牛乳をとおって母乳からも検出された事例があります。さらに河川や海に流れ出した農薬は、魚類やそれを食べる海鳥類からも検出されこともあります。農薬による食品と環境汚染が世界的に広がり、深刻な社会問題として関心が集まっています。
そのために毒性や残留性に厳しい審査を行っています。最近では抵毒性の残留期間の短いものも使用されるようになってきていますが、これまでの農薬についても、人畜に被害を及ぼす恐れのあるものについては、作物残留性農薬、土壌残留性農薬、水質汚濁性農薬に厳しく使用規制を行うようになりました。
それでも、高級果物などで袋かけしないものには、相当な量の農薬が使われていますし、農作業の簡略化から強い除草剤が使われているのが大半です。有機農産物ですと、作物の間に雑草が繁茂し、作物に栄養が回らず、この雑草抜きのまた手間が大きいからです。除草剤を使わずに雑草の根にある土壌微生物との共存で土壌環境を守る農家もありました。
そうした篤農家に話を聞きますと、「作物も雑草も同じ植物仲間。これに除草剤をかけて殺すのでは、いっしょに生きている土中の微生物をも殺すことになり、決していいことではない」といいます。
全くそうです。作物の根、雑草の根、土中微生物の共存、根からの養分吸収を助ける土中細菌群、根圏菌群、そして土壌内環境を考えるのが有機農法の原点だからです。完全な有機農法を目指して、減化学肥料、減農薬を志す農家がたくさんあります。
私たち消費者も農業に興味を持ち、農家のみなさんの努力を理解して、安全な食材を選びたいものです。(つづく)
■食と健康そして環境=連載(1)=考えよう健全な水と食材の確保=水源地汚染じわりと=硝酸態チッソ、生活に影響
■食と健康そして環境=連載(2)=水質汚染は人為的な原因=地域ごとに無くす運動を