2005年7月23日(土)
一番前の列で「どっこいしょーどっこいしょ!」と大きな声で歌い、おかっぱの髪を揺らす鹿股ゆかりちゃん(9、三世)。
踊っているのは教室の外の小さな広場。延長コードを何本も使い、小さなラジカセを外に持ち出しての音楽。鳴子も手作りの使い古し。コロコロとあまり激しくない音がする。「前からあるから、誰が作ってくれたのかわからないけれど愛着が湧いている」と新立春香先生。シンプルな練習場所を舞台に変化させるのは踊る子どもたちだ。
第一回のYOSAKOIソーランから参加しているビリチーバ・ミリン日本語学校の生徒は全員日系で現在四十人。年齢制限に見合った三十四人が当日踊るが、普段の練習はほぼ全員でやっている。また、昨年までは小さい子をはずしていたが、踊りたくて仕方ない様子に、今年は五歳の子からメンバーに入れた。
「やはり初挑戦の五歳児は大変でしたが、大きな子どもたちが教えるのを手伝ってくれました」(新立先生)と言うように、ビリチーバ・ミリンの子どもたちはとても仲良しだ。五歳から十五歳までの生徒が練習の合間に一緒になって遊んでいる。
同校では以前から敬老会や秋祭りなどでヨサコイを用いていたため、その延長でという自然な形での参加になった。「いつもみんなで勉強していて、楽しみながら何かに挑戦しましょうという感じです。あまり力を入れているわけではないですよ」と事前に聞いていたため、子どもたちにこんなに勢いがあるとは思っておらず、驚いた。
初出場のちびっこたちも、お兄さん・お姉さんたちに負けじと大きく腕を振り上げ足を広げる。掛け声や大きな動きには縮こまるところがない。練習を見ている方まで温かくなるような元気いっぱいのヨサコイだ。「朝早い練習が大変だけど来ちゃうと楽しい」と話すのは宮島佳代さん(14、三世)。従姉妹の宮島優子さん(14、三世)と一緒に参加している。「今年は去年の振り付けよりも激しくて一回踊るとすごく疲れちゃう。でもみんなで踊るのは好き」。
「出て、楽しくやればいいです。子どもたちも父兄もみんなで出かけるのを楽しみにしているし」。練習の後、当日のお弁当係りの分担をしながら父兄の一人が話していた。みんなでいつものように楽しむ、それは親も子も先生も共通した考えのようだ。子どもたちはここで、日本語と共に助け合いや年の離れた仲間とのコミュニケーションを学んでいる。
屋外の通し練習で頬を赤くした子供たちにプレゼントが待っていた。
「お母さんたちがはっぴを作ってくれました。大切に使いましょう」。「はーい!」元気いっぱいに返事をして袖を通す子どもたち。真新しいピンク色のはっぴを身にまとってポーズをとったり踊ったりしてはしゃぐ姿で教室は賑わう。
「それではもう一度通してみましょう」。新立先生の声に子どもたちは、手作りのはっぴをひるがえしながら寒空の元へと出て行った。おわり(秋山郁美記者)
■響け!ボクたちの鳴子――今年3年目、YOSAKOIソーラン大会――=連載(2)=「ブラジルを表現しよう」=PLパンデイロ取り入れ
■響け!ボクたちの鳴子――今年3年目、YOSAKOIソーラン大会――=連載(1)=振り付け変えてもすぐ順応=平成学院=3年連続出場の子も