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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から=連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」

2005年9月1日(木)

 ここは赤道に近い熱帯の町、ロンドニア州ポルトヴェーリョ。半年前に着いた時は雨季の真っ只中で、バケツをひっくり返したようなはげしい雨。一時間も降ったら道はぐちゃぐちゃ。道は平らでないので、川のように流れる。
 それでも今年は例年より雨の少ない年らしい。そして、涼しい思いをしたのも束の間、またすぐに太陽が顔を出して、じりじりと照りつける。おかげで私は今となっては現地の人と変わらないほど真っ黒だ。
 日本で雨というといやなものだったが、こちらでは雨が降ると涼しくなるので、雨でも降ればいいなと思うことが多くなった。
 熱帯にいると実感したのはバナナ。日本では見られない青いままで売られている。三日もしたら熟れるだろうと買ってみると、朝は緑色だったバナナがその日の夕方にはもう黄色くなっていた。何でもすぐ熟れ、そして甘い。
 日本で缶詰の味になじんでいたパイナップルの天然の甘さには感動した。サンパウロから遊びにきた友人も「甘さが全然違うね!」と驚くほど。
 日本にはない珍しい果物もたくさんある。クプアス、グアビオーラ、アサイなど、色々試したがどれも美味しい。町で唯一の日本食レストランでは、ブラジルならでは名物、パイナップルやいちごのすしもある。たくわんに見える黄色いものはマンゴーだったりする。
 またここは湿気がすごい。日本から持ってきたかばんやスーツ、シャワー室もカビ、食べ物もすぐにカビる、腐る。雨季には気をつけないと、おなかをこわしてしまう。
 五月ごろからは反対に乾季に入って、もう三ヶ月ほど雨が降らない日が続き、町は埃っぽい。主要道路以外は舗装されていない道がまだ多く、風が吹こうものならコンタクトレンズに砂が入って、目が痛い。
 服も砂だらけになるため、白いシャツは着て歩かないことにしている。小窓を開けているだけで家中掃除が大変。雨が降らない分、気温もさらに上がってさらに暑さが増しているというのに、町中で枯葉やゴミを燃やすことが多く、ただものではない暑さが続く。
 私はハ虫類が特に苦手で、トカゲなど大嫌い。ところが朝起きて、窓を開けるといつもいる。しかも大きい。家の中にいることもある。初めは「キャー!」と逃げていたけれど、毎日見ているうちに慣れてしまったというか逆に今ではかわいくさえ思えてきた。慣れとは不思議なものだ。
 けれど、この熱帯の町にも南風の影響で三日ほど冬がやってくる。コートまではいらないが、薄手の上着が必要な日がある。一年に一度の冬を町の人はここぞとばかりに冬服を着て、満喫している。
 いつも暑い所なので、冬に憧れがあるのか「雪をみたい」とか「寒いほうがいい」という人が多いが、寒さの苦手な私には、この常夏の気候の方がむいているかもしれないと思う。
 気候も何もかも日本と違うポルトヴェーリョ。今しかできない熱帯生活を楽しみながら、その魅力を伝えていきたい。
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【職種】日本語教師 
【出身地】滋賀県大津市 【年齢】25歳

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」