2006年7月7日(金)
セグランサ・ナショナル──。
現行の外国人法は(1)国内の治安や安全保障(2)経済・政治的関心(3)国内労働者の保護―を前面に打ち出したものだ。
発効は一九八〇年。翌八一年に、施行法が定められた。民主化の五年前で、〃対外開放〃へ針路が向けられているとはいえ、まだ軍事政権の時代だ。
政府にとって、共産主義者など異端分子が国内に入り込むのは許されないことだった。
在留資格の変更は不可。一般に、旅行ビザを永住権に切り替えられない。外国人の政治活動が、大きく制限されている。
(1)ブラジル船籍の船舶の船主になる(2)鉱物資源の水力エネルギーの採掘や調査について、承認や許可を得る──こともできない。
ただ宗主国のポルトガル人は別扱い。ブラジル船籍の所有者やマスコミ企業の役員になれるし、政治的活動についても緩やかな規定になっている。
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外国人法は果たして、規制の強い法律なのか?
外国移民の支援団体「SERVICO PASTORAL DOS MIGRANTES」(サンパウロ市イピランガ区)のロベルヴァウ・フレイレさん(51)は「もう二十五年も前にできた法律。時代遅れですよ」と批判。不快感を露わにした。
同支援団体は、カトリック教会に付属した組織だ。「Cidadania e Migrannte」を結成。月に一度、移民代表者、神父、法律家など十人が集まり、外国人法について議論を交わしている。
もともと身分証明書の取得など法律面での支援が中心で、「grupo juridico」と呼ばれていた。政治や文化などの面も考慮していかなければならないと、五年ほど前に名前を変更した。
フレイレさんは特に、永住権の取得条件が受け入れがたいという。
同法によれば、国家開発計画に合致する様々な分野の専門技術を持たなければならない。技術をブラジルに定着させ、外国資本を導入することも求められる。期間は五年(更新は別)を超えてはならない。
永住権を与えられる外国人は大学教授、宗教家、年金生活者、個人投資家など。弁護士で公証翻訳人の今井真治さんは「審査は、かなり厳しいと思う」と推察する。
フレイレさんが不満なのは、一般の外国人には永住権取得のハードルが高いこと。「ブラジル人と結婚するか、ブラジルで子供を生まないと永住権がもらえない」と、同法の閉鎖性に納得できない。
一方で今井さんは「民主化に進む中で、外国人法が成立しているということは、規制が緩和に向かっているのではないか」との解釈を示す。
軍政という点を考慮すれば、外国人に対する規制が強いのは自然かもしれない。国際的にみて、厳格な内容なのかも吟味してみる必要がありそうだ。
「ブラジルの奇跡」と呼ばれる十年を築いたのは六〇・七〇年代の軍政期。開発戦略計画三カ年計画(六八~七〇年)や第一次国家開発計画(七二~七四年)を実施し、年率一〇%を超える高度成長を維持した。
「経済発展のために、外国資本が歓迎された。外国人に対して、締め付けが強かったと言い切れない」。
パウリスタ州立大学人文科学科(マリリア)のオダイール・ダ・クルース・パイヴァ教授は、そう論じる。
外国人法の性格をめぐって、市民団体や識者の受け止め方に、かなりの温度差があるといえそうだ。
(つづく、古杉征己記者)
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