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食と健康そして環境=連載(6)=考えよう健全な水と食材の確保=有機農法、有効なものは堆肥?材料は鶏糞だけ?

3月23日(水)

 ある熱帯フルーツ栽培の農家を訪問したとき、大量に堆肥をつくっている現場を見学しました。堆肥づくりにもいろいろな方法があります。普通は落ち葉や乾草を積み重ねながら、鶏糞か牛糞をサンドイッチのように挟み込んで、水かけしながら堆積していきます。これを一年寝かせてよく熟成したものが堆肥と呼ばれます。
 どんな作物にもこの堆肥を入れると、土壌中の環境が整い、作物の根が元気に伸びます。根が元気ということは、作物も元気に育ちます。その因は土中に多様化した微生物相で、堆肥の施用が大きな役割を持つからです。
 堆肥製造業者に話しを聞きますと、有機農産物に投入する堆肥材の割合にも規定があるといいます。つまり、堆肥に必要なものは、主なオガクズ・樹皮などの有機質資材(炭素材)と醗酵を促すための鶏糞・牛糞などの窒素材を適度の割合で混ぜます。
 これが規定によりますと、鶏糞の場合は全量の二○%が限度といいます。牛糞の手に入りにくい農村では、遠方の養鶏農家から乾草鶏糞を高く買います。なぜ二〇%が限度か聞きますと、採卵養鶏はとくに、病気予防のために抗生物質を大量に投与しているため、鶏糞にまでもこれが残留している可能性が高いというわけです。こうした鶏糞を窒素材として使っても、堆肥内に抗生物質が残る可能性があって、植物連鎖で人に害を及ぼさないとは言いきれない、といいます。
 堆肥つくりのやり方によっては、鶏糞二○%でもじゅうぶん有機物質を醗酵分解し、熟成した堆肥ができます。例え窒素材としての鶏糞を多く入れたとしても、それだけ醗酵が早まり、堆肥化中に養分が多く残る。という考え方は大きな間違いです。発生した微生物の身体に採りこまれない余分な窒素はアンモニア臭のするガス状に飛散してしまうからです。
 いま、多くの農家はこれらの堆肥材も手に入らなくなってきており、どうしても鶏糞などの厩肥と呼ばれる家畜糞だけに偏ったり、堆肥製造業者から出来上がり堆肥を購入したりして施用しています。生の家畜糞を耕地に直接投与したりしますと、土壌中に微生物相が一辺倒になり、単純化します。すると微生物群の中で拮抗する菌が減少し、比較的生命力の強いフザリウム菌とかセンチュウが増殖してかえって作物に大きな害を与えるようになります。これが土壌病害として土壌消毒の必要な土になっているのです。
 ここで化学成分の土壌消毒剤を使いますと一部の自由生活型の線虫や他の有用菌まで死滅し、土中の生態系が破壊され、寄生型の「根コブ線虫」が増える原因にもなります。総称して線虫と呼ばれる微小動物は土壌生物の王様といわれ、二千種以上推定でしかも増殖力は天文学的数字で増殖を続けるそうです。
 こうした畑では、線虫に強い作物を輪作・混作するとか、有機物を多くを含む堆肥を施用して腐植に済みついた有用菌や微・小生物を増やして、自由型微生物と残存の線虫との拮抗性を利用するとかが効果的です。
 家庭の庭に使う堆肥づくりは、ビニール袋に食物の残渣と落ち葉や枯れ枝、それに粉炭を少し混ぜ、匂いが出なくなるまで寝かします。ときどき袋ごとかき混ぜて通気しておくと良いでしょう。匂いがなくなれば芳香のする堆肥の出来上がりです。腐れ匂いのあるものは、水分が多過ぎたための腐れ堆肥でこれは単なるゴミです。堆肥を施用しますと、庭の草木は、一段と元気を取り戻すでしょう。試してみてください。(つづく)

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