3月30日(水)
私たち人間はたんぱく質を採って生きています。とくに日本人は昔から魚介類のたんぱく質に依存してきたところがあります。日本は海に囲まれ海産物に恵まれた素晴らしい環境にあります。
「岡目八目」という言葉があります。私たちブラジル在住のものは、日本の事情がよく見えてきます。ニュースやドキュメント番組等によると、いま日本の海では魚介類の漁獲量が減ってきていると報道されています。日本だけではなく、北海、地中海、南太平洋と世界各地の漁礁で魚介類が減っています。昔の漁獲量の十分の一だとか、百分の一だとか聞きます。
私の生まれたふるさと青森では、ニシンやイワシの大漁で取れすぎたときは、家内工場で加工して有機肥料の魚粉にしているところを子供心に覚えています。いまではイワシやニシンも魚屋さんで一尾幾らかの値段です。どれくらい漁獲量が減ってきたか想像できます。漁業の技術進歩で獲り過ぎたといった方がよいのかも知れません。
アルゼンチンを旅したとき、知り合いの人が「ブラジルでは小さいイワシばかり食べてしまうので、アルゼンチン海域で獲れるイワシはわずかしかありません。お蔭様で、よく太った油ののったおいしいイワシを食べています」と話していました。ブラジル近海で漁師の網にかからなかったイワシが大きくなって、アルゼンチンで捕獲されているのでしょう。イカも同じようです。
いま世界では、森・川・海という一連の生態系を科学的に研究・実証をはじめています。私たちは海と陸とは別個のものだと思い込んでいたのではないでしょうか。何らかの関連性があるとは考えてもいなかったのではないでしょうか。しかし、漁師さんたちは科学的な説明ができないにしても魚介類を増やすためには、湖岸、川辺、海岸の森林を守ることが大切なことだと、知っているようです。
これを知らない事業家たちが、タイなどの海岸線の森林を伐採して、海岸ギリギリまで近代的なリゾートホテル建設をしたために、今回のような大津波で壊滅的な被害を被ることになったことは読者のみなさんも認められることでしょう。
森が防風、防潮、津波の防波堤効果があることは昔から言われていました。米国アラスカ州やカナダでは、サケ・マスが遡上する河川流域の森林を保護する政策をとっています。森林が貧しいと海までが貧しくなることを知っていたようです。森の樹木が海の生物を育てるために大きな役割もっていることも知っていたのでしょう。
森林は河川の水を守り、海を守る力があるのです。そこに生息する微・小生物が河川両岸の植物体を育み、河川水の中に生息する微生物たちが汚染する物質を分解して、水を浄化しながら、魚介類の繁殖に有効な藻類、海藻類(植物プランクトン)を供給するのです。
海岸海域は外洋水と陸水の混合域で、微生物が多く繁殖して、小魚が増え、これを餌に大きな魚介類がよって来ます。この循環こそが、陸・森林・河川・海・魚介類の豊かさを維持できる生態系なのです。
この生態系を大切にすれば、地球温暖化とか地球規模の環境破壊も、改善できると思います。森を守ることが、海を守ることにもつながるという事情を知ることは、私たちも井戸の中の蛙ではいられなくなるはずです。 (つづく)
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