3月31日(木)
私は四年間、ノルデステのナタールで仕事をしていたことがあります。この一帯には森林と呼べるものは何一つなく、海岸線一帯が砂漠化し潅木やヤシがちらほらと見られるところです。
アラゴアス、ペルナンブッコ、セルジッペ、リオ・グ・ノルテ、セアラの各州ともに砂漠化が進む一方でひどいものです。地下水のほとんどは、塩分を含む水でとても飲めるものではありません。農業用水にはとても無理です。よほど深く掘らないと真水にあたらないのですが、この真水をくみ上げると地盤沈下の恐れが大きいために、掘りぬき井戸を禁止しています。アスー市は比較的標高の高い乾草した山があり、その麓に川をせき止めて大きな湖をつくり、ここに雨水を蓄えて、数十キロ先の町まで運河で運んでいます。
最近になって、リオ・グランデ・ド・スル州でもウルグアイとの国境近くで、広大な面積にわたって砂漠が出現していることを知りました。雨の少ない乾燥地や半乾燥地で無理な農地開発を行ったため、砂漠化が進んでいると考えられます。いま世界的に持続可能な農業の展開について話し合われ、地球規模ですすむ環境破壊を食い止めようとしています。
宇宙衛星のランドサットから赤外線写真でリビア砂漠を写すと、砂漠の地下には古代の農業や灌漑用水路の跡がきちんと写るといいます。これは間違いなくカルタゴは素晴らしい農業地帯であったということです。これがローマ帝国の穀物供給地にされて、連作につぐ連作で、結果的には土壌流亡や塩類集積などで砂漠になってしまったのです。
メソポタミアなどの古代農業の壊滅は略奪農業に原因があるといいます。田中学東京農業大学農学部教授は「環境保全型農業で、合理的農業というものは、大きな物質循環なり、あるいは人間と自然といった関係で、それがどこかでぐるっと循環して結びつかなければならない。そうでなければ、それは一種の略奪農業であって、それを繰り返していくと長期的には農業を続けることが不可能になってくる」といっておられます。
前回の記事でも書きましたが、海と陸は生態系でつながっています。その仲介をしているのが微・小生物であることは、あまり知られていません。
農業の基本である土づくりは、土壌微生物を増やし、土地を肥沃なものに戻してやることです。肥沃な土地では化学肥料を減らし、農薬も減らすことが可能になり、私たちに安全な食物を提供してくれます。肥沃な土は、川に流れ込み、川岸の森林を増やしてくれます。森林を通過した水は多くのミネラル成分を海へ運んでくれます。そして、混合域では、プランクトンをエサにする貝、魚が増えることになります。魚は陸上の動物たちのエサになり、飼料になって土壌を肥やしてくれます。これが海と陸の循環生態系となります。
農業で土を大切にしないと、陸上での物理的な障害ばかりでなく、陸の富、海の幸への障害となり、私たち人間の生命にも危険をもたらすようになってきます。読者のみなさんもこの生態系についてよくお分かりいただけたかと思います。(つづく)
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