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食と健康そして環境=考えよう健全な水と食材の確保=連載(11)=安全な養殖魚介類=沿岸の海産物は危険

4月1日(金)

 サンパウロ在住の海洋学者K氏と知り合いました。K氏は「日本の沿岸、近海の魚は河川の汚水が流れ込んで海が汚染されてきており、魚介類が汚染され始めている。逆に養殖魚介類の方が安全だというレポートがある。農林水産省もこれには困っている様子だ」という意外な話しでした。
 私たちは海こそあれば魚介類が安全に生育できる。海は常にきれいなものだ、と思い込んでいたような気がします。しかし、生活廃水が海に流れ込んでいるのも現実です。混合域で育つ魚介類も多くあるからです。ときどきフェイラで買うボラで煮魚をつくったとき、ドロ臭さや油臭さが残ることがありますが、気がついている人は少ないと思います。ボラはこの混合域で多く獲れる魚です。生活廃水の化学成分が体内に蓄積していたとしたら大変なことです。
 海は生命誕生の母であり、海水成分は人の身体を流れる血清の成分によく似ており、海水が源だといいます。海水に多い鉄分と同様に人間の体内を流れる血液にも鉄分が多く、体内組織へ酸素を運ぶ役割があります。
 酵素ということばがあります。化学反応を早める触媒の働きをするたんぱく質のことです。海水中で植物プランクトンや海藻がなければ貝や魚が増えません。藻類の生長に必要な硝酸塩を体内に採りこむには、そこに鉄分がなければなりません。硝酸塩を還元するためには硝酸還元酵素が必要になります。鉄分はこの酵素にも大きく関わりがあります。
 植物も同様に、光合成をするためには鉄はきわめて大きく関与しており、鉄がないと光合成色素が生成できません。生命体の繁殖と維持にはこうした重金属成分も必要で、海の魚介類、陸の動植物、そして人間にいたるまで、海水が大きく関係しているのです。
 森林を伐採し、河川域の生態系を壊し、さらに私たち人間の営みから排出される生活廃水を川に垂れ流して川水の中の微・小生物生態を破壊し、しかも、それが海に流れ込んで海中生物の生態バランスを崩し、魚介類が汚染されてきているのです。
 私たち一人一人が注意しながら、環境保全を考え、森林や川を大切にしないと、私たち自身が自分の生命を危険にしていることになりかねないということです。私たちにとって森林とは、心を和ませてくれ、資源であり、天然の防波堤でもあります。森林が腐植層をつくり、そこに微・小生物が育まれ、栄養素と保水性の働きをし、そこで繁殖した微・小生物が河川を浄化しながら海に達して海藻となり魚介類をさらに増やしてくれるのです。これが豊かな国づくりといっても過言ではないでしょう。
 人口増加からくる農産物増産のために化成肥料・農薬を多用する農業は、一種の略奪式農業で土壌中の微生物相を壊しています。陸水と外洋水の混合域は生活廃水で汚染され沿岸の魚介類の生態系を壊しています。さらに、漁業技術の進歩で世界中の魚場から、魚介類を獲る略奪式漁業が続いているのです。
 私たちにとって、安全な食物とは何か。健康な食物とは何か。私たちの健康を維持できる環境とは何か。私たちのエゴで地球環境が破壊されていいものでしょうか。今度愛知県で開催される「愛、地球博」はそうしたことを集約した博覧会であることを期待してペンを置きます。
 長い間、ありがとうございました。(了) 〇五年三月九日 農業コンサルタント・成田修吾(連絡先は電話9625・1814)

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