2006年1月19日(木)
乾期になり、八月くらいから工場の主力製品「アサイ」の搾汁が始まった。パラ州特有の椰子で、果実は径一・五センチ弱、重量二グラム弱ととても小さいが果房にビッシリとつく。
高い位置に結実するので木に登り、枝を切り落とし、果実を一つ一つ収穫する。収穫した果実は温水にしばらく浸すと果皮が柔らかくなり、実の入っていないものが浮いてくるので、それらを取り除く。
その後は専用の機械で搾汁すれば赤紫色の濃いしるこ状の液体が出てきてこれを冷やして食べる。果実の状態と製品の希望粘度によって搾汁するときに水を加えたり加えなかったりする。
アイス・シャーベットなどのデザートとしての加工の他に、パラ州ではマンジョッカの粉(ファリーニャ)やタピオカと共に混ぜて食べたり、おかずとして肉や魚と一緒にアサイを食べる。
分類としては果物だが、存在はおやつやメレンダであり、おかずであり、一つのカテゴリーにおさまりきらないのがアサイの特徴である。
工場では「これからアサイが始まりますので皆さん頑張りましょう」の意味を込めてフェスタが行われた。食事・シュハスキーニョ・ビールが振舞われ、ブレガー・フォホー・カリンボー等を踊って楽しんだ。
アサイの搾汁が始まってからは、臨時従業員をどんどん雇い、溢れかえるアサイがジャンジャン音を鳴らしながら機械の中を流れた。収穫後、直ぐに搾汁しないと腐ってしまうかなりの厄介者なので、休日出勤は当たり前、従業員を二交代制に変えて早朝から夜遅くまで働かざるを得なくなった。
どんなに振り回されようと、身が粉に なろうともという働きぶりから、アサイに対する情熱には並々ならぬものを感じた。
ここでは、 どこに行ってもパラエンセから「あんたアサイは食べた?好き?」と聞かれる。食べたと答えると、次の質問は必ずこれだー「砂糖を入れる方が好き?入れない方が好き?」。
「アサイ美味しい・大好き!」何て答えようものなら 「あんたそりゃもうパラエンセだ!」の決まり文句。「サンパウロで飲むアサイなんて水だよ!」ことアサイに関してはどうしても譲れないのがパラエンセだ。パラ州の、それもこの工場 のグロッソなアサイが一番なのだ。言い伝えも色々だ。
アサイと牛乳やビールを一緒に飲んだらいけない、レモンを絞るのもタブーである、アサイを食べたら眠くなる…等など。お腹が出ている人はビール腹ではなく、アサイを食べ過ぎた腹とさえされる。
それにしても、「ンー」と言って目を閉じてアサイを味わう時の顔ったら本当に幸せそう!私もいつの間にかすっかり虜になってしまい、旅行から帰ってくると真っ先にアサイを食べ、工場で頻繁に飲むにも関わらず、週一のスタンダード食品としてアサイを食べている。
もうすぐ雨期になり、アサイの搾汁も終わろうとしている。このエッセイが掲載されるときはもしかしたらすっかり終わっているかもしれない。一人の女性従業員に「アサイが終わるからサウダージだねぇ?」と聞いたら、彼女は「なあに、これからは残業もないし、六時に仕事が終わったら家に帰るだけさ」と笑いながら答えてくれた。
さっき、同僚の女性から「今日の搾汁品タペレバとマラクジャーどっちが好き?」と、聞かれた。二人とも口を揃えて「マラクジャーが好きだけどどっちも好き。でも一番好きなのはアサイ!」。全くの同じ意見に私と彼女は笑いあった。
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【職種】食品加工
【出身地】福岡県春日市
【年齢】26歳
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