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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から =連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」

2006年2月2日(木)

 日本語教師という職業柄、といってもブラジルに来てから初めて経験する職業だが、アマゾンに暮らしているとインディオの文化に触れることが多く、ボイ・ブンバの影響もあって最近の私の関心ごとは「インディオ語」そして「インディオ」である。
 未だに訓練中と変わらないポルトガル語能力にかかわらず、生徒に「よく使うアマゾンのことばを教えて」と催促している。出てきたそれらのほとんどはインディオ語である。
 インディオ語といってもアマゾナス州には多くの部族が暮らし、それぞれ言語を持っているのでインディオ語というのは適切ではないかもしれないと思い、身近なインディオAさんに聞いてみた。
 彼らは共通言語として「リンガジェラル」というのを使うそうだ。彼は「これはグァラニー語と同じだよ」と教えてくれた。よく使う「カラパナン=蚊、クルミン=子ども、トゥルリー=シャツ」といったことばは全てリンガジェラルだそうだ。
 こうしてことばを知ると、その背景である文化が知りたくなってくる。パジェ(祈祷師)にはどうやったらなれるのか、その他にインターネットから得た乏しい情報を一つ一つ「これは本当?」と聞くと、彼は辛抱強く私の質問に答えてくれた。その答えには、常に自然とともに暮らすインディオの姿が浮かび上がってきた。
 そして今、この自然が失われつつあることを私は知ることとなった。今まで「森林破壊」ということばは幾度となく聞いて知っていたが、それに対し自分自身が何か危機感を覚えたことはなかった。インディオのことを知れば知るほどこの森林破壊が深刻なものであること、彼らの置かれている状況というのが見えてきた。
 私の職場兼住居である日伯協会から歩いてほんの三十秒のところにFUNAI(Fundacao Nacional do Indio)がある。私がマナウスに着いた翌日からそこでインディオたちがデモをしていたのを覚えている。そのときはなんのことかわからず、ただの野次馬として彼らのダンスを眺めていた。 現在アマゾナス州の森林破壊は他州に比べるとそれほど深刻でないと教えてもらったが、すぐに深刻となる日が来るのは明らかだ。わずかな知識で偉そうに言えないが、なにごとも問題が深刻になってから取り組んだのでは遅いのではないか。
 厳しい自然とともに生活するインディオたち、Aさんの話を聞けば聞くほど彼らに魅了される。
   ◎   ◎
【職種】日本語教師
【出身地】岡山県苫田郡
【年齢】26歳

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」