2006年3月23日(木)
青年ボランティアとしてブラジルに来る前、日本で出稼ぎ子弟と深く関わっていた私。親に連れられ、海を越えてやってきた子ども達は、皆生命力に溢れ、明るく、とても魅力的だった。
やれ国際化だ、多文化だ、と騒がれるこの時代に「この子達こそがこれからの時代を担っていく子ども達だ」と強く感じ、彼らが周りに流されないで、力強く生きる力を付けて欲しいという想いでサポートに当たった。
しかし、南米からの日系人が増加する一方で、日本ではこれらの人々を一市民として、又は一県民として受け入れる体制が整っている自治体はまだまだ少ない。
私が出会った日系の子ども達の殆どが来日するまで日本語に触れたことはなかった。そして日本の学校で「ブラジルから来た○○君」という扱いを受け、本来自分のルーツである日本に居ながら、自分の中に流れる「日本人の血」に気付かず過ごしている彼らを見て、本当に寂しく、勿体無く感じた。
また、子どものみならず、私が出会った多くの日系人達は「日系人」であるが故に今日本に居るのにもかかわらず、仕事に追われ、自分のルーツについて考える余裕など無いように見えた。
そんな折、ブラジルには今も根強く日系コミュニティーが存在しており、日本語教育にも力が入っている、という話を聞き、日本のブラジルコミュニティーとブラジルの日系社会との繋がりをこの目で見て確かめたい、という願望がふつふつ沸いてきた。
そして念願のブラジル日系社会に来た訳だが、そこに居る人々は人情厚く、真心で私を受け入れてくれた。私はその有り難い気持ちに日々心打たれている。 私が派遣されたピエダーデ市はサンパウロから百キロ程離れた田舎町だが、日系人が運営する文化体育協会はなお健在で、日本語学校も生徒の減少に悩まされてはいるが、教育熱心な父兄達にしっかり支えられている。私はこの前向きな輪の中に入り、微力ながらも活動が出来る事に誇りを感じている。
私は、JICA青年がブラジル全土に散らばっているという事もあり他の学校の先生方とお会いして学校の様子などを拝聴する機会も多くあるが、どの学校でも様々な問題にぶち当たりながら、より良いカリキュラム、授業作りを目指して奮闘している。
随分近くなったブラジルと日本。こんな時代だからこそ、ブラジルの日本語教育が益々活気付き、一人でも学習者が増えて欲しい、そして、自分のルーツに誇りを持ってブラジルー日本間を股にかける人々がもっともっと増えてくれる事を心から願うこのごろである。
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【職種】日本語教師
【出身地】三重県伊勢市
【年齢】33歳
- ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
- 連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動
- 連載(32)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=ブラジルのお盆
- 連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?
- 連載(30)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=コロニアで聞く戦争体験
- 連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
- 連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
- 連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
- 連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
- 連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
- 連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
- 連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
- 連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
- 連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
- 連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
- JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
- JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
- JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
- JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
- JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
- JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
- JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
- JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
- JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
- JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
- JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
- JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
- JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
- JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
- JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
- JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
- JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
- JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
- JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」
- 連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動