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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から =連載(40)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=アマゾン加工食品の妙

2006年5月4日(木)

 パラ州の食べ物は美味しい。ベレンで食べるエビやカニ、魚介類があまり食べられない地域でもタカカ・バタパ・マニソバの三大伝統料理がある。
 このタカカ、トゥクピーという黄色い調味液にトロトロのタピオカ粉水溶液を加え、塩エビとジャンブーというしびれ草をのせる。 見かけは味噌汁のようで、味は酸味と塩味が絡んだ感じ。ジャンブーを食べると勿論口がピリッとする。最初は「何これ?」と思ったが段々癖になる代物。「酒を飲んだ後の一杯」に最適で、個人的にその存在は故郷の〃博多ラーメン〃。
 又、ジャンブーは砂糖・醤油・酒・みりんで油炒めすると、これまた美味しくブラジル風〃九州辛子高菜〃。日本の大好物二つがさほど恋しくならずに過ごしてきたのは、紛れも無くタカカやジャンブーの油炒めのお陰である。
 いつしか、私はそれらの料理の作り方ではなく、トゥクピーという調味液の作り方に興味を持ち始めた。しかし、知り合いに聞いてみると「アレは難しいわよ」のあっさり一言。市場などで売られている、飲んだ後のペットボトルに入ったトゥクピー液を買うしか手段が無いのだとか。 こんなにお世話になっているのに自分で作ることが出来ないとは…。この点から見てもやっぱり〃博多ラーメン〃である。
 気になり始めたら止まらない。色んな人に話を聞いたり、自分で調べてみた。すると、トゥクピーの作り方は以下のようであった。
 マンジョッカ芋をイガラペ(天然川の狭い水路。庶民の水浴び場でもある)で三日間浸す。水に浸ったマンジョッカの皮を剥き、細かくすりおろしてチピチという竹のような木片で編んだ長い筒に入れる。チピチを引っ張ると濾過液が出てくる。
 この液に塩、にんにくの葉などを入れて三十分ほど沸騰させるとトゥクピーが出来上がる。しかし、このマンジョッカは、トゥクピーを作るだけではなく、別の工程でブラジルの主食の一つファリーニャや、ポップコーンのような主食ファリーニャ・デ・タピオカ、タカカに入れるタピオカ粉などにも加工することができるという。
 原料をくまなく利用することができる理想的加工品。何故誰でも作れないのかというと、綺麗なイガラペで浸さないといけない。綺麗なイガラペは街から最低十キロは離れた場所にある。
 ちなみにマンジョッカが浸ったイガラペで泳ぐと怒られるらしい。それと、一つの原料から四つの加工品が出来るように、かなりの作業を要するらしい。話を聞いて分かったのはここまでだ。
 もしかすると間違っている箇所もあるかもしれない。最初は単純にトゥクピーの作り方だけを知りたかったのに、こんなにお釣りが沢山くるとは…。まさしく目からウロコであった。
 食品加工という職種柄か、はたまた個人的趣味か。「美味しいから」というだけではなく、こんなに興味深い伝統的な加工品は無い。ここまできたらブラジル滞在中に加工現場を是非見学させてもらいたい。現在同僚にお願い中である。
   ◎   ◎
【職種】食品加工
【出身地】福岡県春日市
【年齢】26歳

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(39)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツはははの一週間
連載(38)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「祖国」について思うこと
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連載(36)=後田聡子=レシフェ日本文化協会 =いつかペルナンブカーナに
連載(35)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=子供と正直に向き合って
連載(34)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=ブラジル―日本間で
連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動
連載(32)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=ブラジルのお盆
連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?
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連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
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連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」