2006年5月11日(木)
マナウスにはありとあらゆる音楽を楽しめる場所がたくさんある。DJで音楽をかけているところ以外は、ほとんどオープンエアで生のバンド演奏である。 今では建物の中で踊るのもDJで踊るのも嫌になったほど。汗をしこたまかきながら踊る気持ちよさを一年中楽しめるのがマナウスだ。その中でも今回はフォホーについて書きたいと思う。
フォホーというのは、ブラジル全土にある軽快な二分の四拍子の音楽・ダンスだ。二十世紀の初めにノルデステの鉄道建設のために来ていたイギリス技師たちが、建設に従事する労働者たちのために行っていた週末パーティー〝FOR ALL〟が訛って「フォホーFORRO」となったと伝えられているようだ。
北部では田舎に行けば行くほど、フォホ―しかないんじゃないだろうかと思うくらいだが、どうも南の方のものと、ここマナウスのものとは大きな違いがあるようだ。
実際私もフロリアノーポリスでフォホーを踊るところに行ってみた。するとその健全な踊り方にひどく驚いた。まるで運動会のフォークダンスのようなのだ。
私の中のフォホーというのは、ステージのバンドの人たちと一緒に踊るお尻も露わなセクシーなダンサリーナちゃんと、スケスケの網状の服を着たダンサリーノくんたち、そしてフロアで激しい波のように腰を動かすマナウアラ(マナウスの女性)たちである。
ご存知のようにフォホーは男女ペアで踊るもの。マナウスっ子の手にかかれば、それはそれはとても卑猥なくらいやらしい男女のダンスとなることもある。 もちろん中には下手な人もいるのだが、私はマナウアラたちが悩ましい腰つきで踊る姿が大好きだ。サンバに見られるそれとはまた別ものだと思う。上手なペアの人を見て学び、まねしようとするのだがあの腰つきだけはどうもDNAに組み込まれてないようで同じようにはいかない。
そして悲しいことに日本人のお尻はぺったんこなのだ。ブラジル人は男女ともにすてきなお尻の持ち主であるがために、こういった腰を使ったダンスがさまになるのだろう。
フォホーははっきりと好き嫌いが分かれる。私の周りに好きという人はほとんどいない。好きだというと白い眼で見られることの方が多いのだ。おそらくダンスの密着度が高い、音楽がダサイ、教養度・所得が低そうな人が多い、場所が危ないというような理由からだ。
そしてそこには自分たちがフォホを踊りこなせない、という嫉妬も加わっているのではないだろうか。 フォホーが好きというと誤解や偏見を招きやすいが、それでも私は「好き」と言いたい。
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【職種】日本語教師
【出身地】岡山県苫田郡
【年齢】27歳
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