ホーム | 連載 | 2006年 | JICAボランティア リレーエッセイ=最前線から | ■JICA青年ボランティア リレーエッセイ

■JICA青年ボランティア リレーエッセイ

■コロニア
ニュース

■ブラジル
国内ニュース

■コラム

■企画

■会社案内

■リンク集

■トップページ

=最前線から
■連載(55)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=移住50周年を迎えて

2006年8月17日(木)

 先月二十九日、首都サントドミンゴのホテルハラグアにてドミニカ日本人移住五十周年式典が行われた。ドミニカ・日本両国から多くの来賓が出席したほか、ドミニカ全国から老若男女問わず多くの移住者、日系人の方々が一堂に会し、会場は超満員となった。とても賑やかだった。
 午前中に行われた慰霊祭では、この地で亡くなられた移住者の方一人一人の名前が読み上げられ、名前の刻まれた慰霊碑へ献花が行われた。どのような思いで亡くなられたのかを思うと、胸が痛んだ。住み慣れた母国を離れ、見知らぬ地へ移住することには、想像を絶する覚悟が必要だっただろう。
 それでも夢を追い求め、この地に来られた方々はとても勇敢で素敵だと思う。その勇気あるご決断、ドミニカでのご苦労、ご活躍を、同じ日本人として心から尊敬したい。亡くなられた方々が心安らかでいられますように。そう願いながら黙祷した。
 午後は、ドミニカ人歌手によるメレンゲ、日本人歌手による演歌ショーが行われ、大盛況だった。特に演歌ショーのときは、一世のおじいちゃん、おばあちゃんたちが目を細め、嬉しそうな笑顔を見せていた。それを見た私もなんだかとても幸せな気持ちになった。これからも、こんなふうにみんなが笑顔でいられたらいいなと思う。
 ショーの合間には、日本語学校の生徒による歌と踊りの発表や、JICAの本邦研修(六月中旬から七月中旬にかけて日本語学校の生徒三名が日本にて研修した)報告発表も行われた。ドミニカと日本の将来を担う子供たちの今後がとても楽しみだ。
 式典が終わったある日、ある一世のおじいちゃんがいつものように言っていた。せかせかしている日本よりも、のんびりしているドミニカのほうが住みやすい、だから私は日本には行きたくない、と。
 ドミニカ移住は周知のとおり諸問題を抱えてきた。ドミニカへ移住してきたことを後悔している、日本に帰りたかったが帰れなかった、などのお話を聞くことも少なくない。そんなお話を聞く度に、私も悲しい気持ちになる。
 しかし、ドミニカに愛着をもって、この地で生活を続けておられる方もいるのだ。たしかに、よく言われることではあるが、今の日本には欠けているものが、この国にはたくさん残っているように感じる。
 人の温かさ、ゆっくりと流れる時間、豊かな自然や動物たち。せわしい日本にいてはなかなか味わうことのできない、心の豊かさ、人間らしい生活が、ここにはある。
 移住者の方々の心の痛みがいつの日か癒え、日系社会が未来に向かってこれからも活躍、前進を続けることを願ってやまない。
   ◎   ◎
【職種】日本語教師
【出身地】埼玉県蓮田市
【年齢】27歳
 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(54)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=ブラジル再発見の旅
連載(53)=竹村雅義=南マットグロッソ州日伯文化連合会=オーパ!ブラジルの中のニッポン
連載(52)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=積み重ねられる歴史
連載(51)=豊倉麗子=アマンバイ日本人会(パラグアイ)=移住の歴史を後世に
連載(50)=大畑りつ子=コロンビア日系人協会(カリ)=一世から学んだ元気の秘訣
連載(49)=平安寺映美=エンカルナシオン日本人会=二つの言葉の間で
連載(48)=宇野麻美=ヴィトリア日系協会=「当たり」だった出会い
連載(47)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=カリブ海の日本語学校
連載(46)=岡本真樹=トカンチンス日伯文化協会(トカンチンス州)=トカンチンスのスター?!
連載(45)=名村優子=エステ日本人会(パラグアイ)=国境の町の学校
連載(44)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=みんなで楽しむ運動会
連載(43)=大畑りつ子=コロンビア日系人協会=コロンビアからコモ・エスタ?
連載(42)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=「何とかなる」の精神
連載(41)=原規子=西部アマゾン日伯協会=浅黒い肌にしなる腰
連載(40)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=アマゾン加工食品の妙
連載(39)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツはははの一週間
連載(38)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「祖国」について思うこと
連載(37)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=「悔しい」気持ち
連載(36)=後田聡子=レシフェ日本文化協会 =いつかペルナンブカーナに
連載(35)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=子供と正直に向き合って
連載(34)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=ブラジル―日本間で
連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動
連載(32)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=ブラジルのお盆
連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?
連載(30)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=コロニアで聞く戦争体験
連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」
Copyright 2005Nikkey Shimbun (Jornal do Nikkey)